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2024年4月19日

#Report

たったひとりのワガママから社会を動かす。ワガママLab2023年の学生と地域の挑戦 【Japan Wagamama Awards 2023】

全国の自治体と連携し、地域の中学生・高校生・大学生を対象にテクノロジーを活用して地域課題の解決に挑戦するプログラム「ワガママLab」。

1年間の集大成として、App Inventor Foundationの後援のもと「Japan Wagamama Awards 2023」を2024年3月30日にオンラインで開催しました。

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まずは、オープニングムービーです。

▼オープニングムービーはこちら

2023年には、5つの地域でワガママLabのプログラムが展開され、21個の地域で暮らす人たちの困りごとを解決するスマートフォンアプリが生み出されました。

今年のJapan Wagamama Awards のテーマは、「私たちの挑戦。それは地域にとっての挑戦。」です。

ワガママLabが創りたい社会

ワガママLabが創りたい社会について、ワガママLabブランド責任者の永井より話をしました。

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たったひとりのワガママを叶えることは社会を動かす

私たちは「ワガママ」をこう定義しています。

  •  本当はこうなったら良いなと思っているけど、諦めていたり、我慢していたり、心の中にしまっていること

ワガママLabでは、”たったひとり”のワガママに対して、自分ができることから行動を起こすことで社会を動かします。

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カーブカット効果をご存知でしょうか。

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横断歩道を渡ろうとすると、歩道と車道の間に段差があることがあります。

この段差、車椅子利用者にとっては非常に危険なもので、数センチの段差でも道を渡ることを諦めてしまうことがありました。

そこで、1970年代はじめ、アメリカのバークレーで、この問題をなんとかしたいと思った車椅子利用者が、段差をなくしスロープをつくる活動を始めました。

たったひとりの困りごとから起こった行動は、多くの人に共感され、思いがけない結果を生みます。

段差がなくなることで、これまでなんとなく不便だと思っていた、ベビーカーを押す人、重い台車を押す人、スーツケースを引く人など、多くの人にとって移動が楽になりました。

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そして、行政も動きました。スロープを設置する政策ができ、アメリカ各地へと広まっていきました。

カーブカット効果は、少数の声を尊重することが、結果的に多くの人にとって便利なまちになるという事例です。

ワガママLabでも、”たったひとり”のワガママを叶えるために、自分のできることから行動することで、社会を動かすことができると考えています。

日本の若者に自らの力で社会を動かす経験をしてほしい

日本財団が行った18歳意識調査を見てみましょう。

「国や社会に対する意識」をテーマにした調査で、9カ国の17歳から19歳の若者たちを対象に行われました。

結果がこちらです。

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それぞれの質問に対して、各国の若者が「はい」と答えた割合が表示されています。

日本はこちらにある全ての質問項目で最下位です。

特に注目したいのが、「自分で国や社会を変えられると思う」の質問です。インドの83%に対して、「変えられる」と回答した日本人は18%、5人に1人以下です。

日本の若者は自分で国や社会を変えられるとは思っていないことがわかります。

日本の若者に、自らの力で社会を動かす経験をしてほしい。

私たちは、その手段として、たったひとりの課題に寄り添い、スマートフォンアプリをつくって課題の解決に挑戦するプログラムを行っています。

ワガママLab2023年の軌跡

ここからは、2023年に行った各地でのワガママLabの取り組みを紹介します。

三重県桑名市

桑名市は名古屋駅から電車で30分。都心に近いということもあり、若者たちが外向きで地元に関心が薄いという傾向のあるまちでした。

若者たちにまちに関心を持つ体験をして欲しい。そんな職員さんの想いから、小中学生と親子を対象にワガママLabプログラムを実施しました。

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福島県須賀川市

須賀川市は福島県のほぼ中央で、郡山駅から電車で15分のところにあります。須賀川市のビジョンを作成し実行するまちづくり団体「須賀川南部地区エリアプラットフォーム」のみなさんとともに行いました。

未来ビジョンのひとつ「中高生が自分の将来をイメージできるまち」の実現に向け、中高生を対象に須賀川ワガママLabを実施しました。

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茨城県鉾田市

鉾田市は人口4.5万人で、日本で一番野菜をつくっているまちです。農業が盛んであるという特徴がある一方で、仕事の選択肢が限られていて若者が地元に帰ってこないという課題があります。

鉾田市では地元の中高生と地元を出た大学生を対象に、1月から3月、9月から12月の2期プログラムを実施しました。

1期目で大学生だったメンバーが社会人となり、2期生をサポートするという循環が生まれています。

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群馬県嬬恋村

嬬恋村は、軽井沢と草津の間にある人口1万人のまちです。26歳の担当職員さんの同級生で、地元に帰って働いている人は3人とのことです。

若者たちにとって挑戦できる村になりたいという強い想いがあり、大学生を対象としたプログラムを実施しました。

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福井県あわら市

あわら市は人口3万人、北陸を代表する温泉のまちです。

今年、北陸新幹線が開通するタイミングで、地元を元気にする起爆剤を探りたいという想いから、大学生を対象にしたプログラムを実施しました。

嬬恋村とあわら市はAKKODiSコンサルティング株式会社と連携したインターンシップとして実施しました。

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これまで全国のみなさまの想いをのせながら「ワガママLab」プログラムは行われてきました。

学生たちの視点で地域で暮らす人のワガママに気付き、アプリをつくるというアクションをすることで、地域の若者たちが社会を変えられる可能性に気づく。

そして、大人たちも地域の若者たちを応援し、一緒に挑戦することで、大人たちも輝く。

そんな若者も大人も活躍する仕組みをつくりたいと考えています。

世界につながるワガママLab

続いて、マサチューセッツ工科大学認定教育モバイルコンピューティングマスタートレーナーの石原正雄先生よりコメントをいただきました。

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ワガママLabで使用している「MIT App Inventor」は、誰もが簡単に無料でスマートフォンアプリを開発することができるツールです。

プログラミングの民主化を目指してMIT App Inventorは生まれました。民主化というのは、一部の人が持っている力を、広く多くの人に使ってもらうことです。プログラミングは誰でも少しの努力でできますが、一部の人が使っていても世の中を大きく変えることはできません。

プログラミングの民主化を実現させるための活動は各地で行われていますが、先鋭的な取り組みの一つが「ワガママLab」です。本日のアワードでも、身近な課題からはじまって、社会課題につながっていく発表が聞けることを楽しみにしています。

次に、App Inventor Foundation代表のNatalie Laoさんよりウェルカムメッセージをいただきました。

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MIT App Inventorは世界中のほぼ全ての国で利用され、2023年には1,120万人がApp Inventorを学んでいます。

アジアでもMIT App Inventorは広がっています。

台湾では、日本の文部科学省に相当する台湾教育部と連携して、全ての中高生を対象に、MIT App Inventorを活用して地域の問題に取り組むプログラムが行われます。

Japan Wagamama Awardsに参加した学生の皆さんと直接会い、プロジェクトについて詳しく聞くことを楽しみにしているというコメントもいただきました。

ワガママLabが世界につながっていることを感じることができるウェルカムメッセージでした。

3名の学生によるプレゼンテーション

2023年にワガママLabでつくられたスマートフォンアプリは21個。参加者は述べ68人。

地域課題をモバイルコンピューテーショナルアクションを活用して、解決に挑戦する活動の集大成として、本日は高校生と大学生の3名が発表を行います。

地元を出た大学生が、おじいちゃんおばあちゃんとつながりを感じられるアプリ「Connect」

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まずは1人目、ほこたワガママLab2期に参加した大学生のSさんの発表です。

地元を離れている大学生のために、おじいちゃんおばあちゃんと気軽に連絡がとれるアプリをつくりました。

進学などを機に地元を離れると、祖父母との関係が疎遠になりがちです。その結果、大事なことも連絡をためらってしまうという状況があります。

例えばSさんは、ネットショッピングを使いたいときや体調が悪いときなど、すぐに連絡をしてくれれば、自分にもできたことがあったのにと感じる場面があったそうです。

おじいちゃんおばあちゃんと継続的なつながりを持ち、離れていても何か困りごとがあったときは連絡をしてほしい。そんな自身の想いから生まれたのが、おじいちゃんおばあちゃんとつながりをつくるアプリ「Connect」です。

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おじいちゃんおばあちゃんに写真を共有するアプリで、孫は写真を送り、おじいちゃんおばあちゃんは既読をつけるだけのシンプルな操作です。

話題に悩まず、コミュニケーションをとれるようにしているので日常的につながりを感じながら、継続的な連絡を気楽にとることができます。

実際におじいちゃんおばあちゃんと妹さんに使ってもらったところ、おじいちゃんおばあちゃんは全ての操作をでき、妹さんも見てくれているという嬉しさが感じられたという声がありました。

そして、このアプリを使うことを習慣にするためには、「毎食の写真を送るね」など、事前に約束をしておくことを推奨しています。

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このアプリを通して、インターネットが苦手な方でも気軽にコミュニケーションできる環境づくりを目指しています。

地元から離れて一人暮らしをしている全国の学生、会話でのコミュニケーションが苦手な人、単身赴任しているお父さんなど、さまざまな人に役に立つアプリになることでしょう。

同じ目標を持つ仲間とつながれるアプリ「Achieve Friend Link」

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次に、須賀川ワガママLabに参加した高校3年生のAさんの発表です。

1人だと一歩前に踏み出すのが不安な男子高校生が、1人で目標を立てても挫折してしまうことを解決するアプリをつくりました。

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このテーマでつくったきっかけは、Aさん自身が高校3年間でダイエットをした経験です。1人でダイエットを成功させたものの、そのときに一緒に頑張ってくれる仲間が欲しかったという想いがありました。

そこで、このアプリでは、自分の目標を掲げ、同じ目標を持った仲間とLINEのオープンチャットでつながれるようにしました。

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このアプリが友達をつくるきっかけとなり、学校に行けていない人も同年代のつながりをつくる場になります。

発表の最後には、ワガママLabの経験は大学の推薦入試にも役立ち、大学入学前に良い経験ができたと話してくれました。

受験勉強をする場所が欲しい幼馴染のためのアプリ「Study supporter」

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最後に、ほこたワガママLab1期と2期に参加した高校2年生のNさんの発表です。同い年の幼馴染に向けて、アプリをつくりました。

その幼馴染の方は、希望の進路に向けて受験勉強をしていますが、家では集中する環境が整っていないとよく言っていました。この幼馴染の課題をなんとかしたいという想いから、まずは鉾田市の現状を調べることにしました。

はじめに、鉾田市の高校生を対象に、Instagramのアンケートを用いて調査しました。

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結果は図書館に集中していて、「鉾田にもっと勉強できる場所が増えてほしいか」という質問に対しては、107人中94人が「増えてほしい」と回答しました。

そこで、鉾田市内の勉強できる場所を探してみることにしました。

まずは、市役所職員さんに勉強できるところがないか聞いてみたところ、今年1月にできた「カフェ&コミュニティスペース ぱれっとらいふ」を紹介してもらいました。

実際にぱれっとらいふに伺ってみると、「勉強してもいいよ」と言ってくれました。実は、勉強してもいいと言ってくれる飲食店は他にもあるのかもしれないという考えが出てきました。

そこで、追加で4店舗の飲食店に伺って聞いてみました。

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すると、席の関係で勉強は難しいというところもありましたが、全てのお店で鉾田市の学生をサポートしたいという声をもらえました。

このフィールドワークから、大人たちは鉾田市の学生をサポートしたいという気持ちはあるが、どうサポートしてよいかわからないと感じていることがわかりました。

これらの調査とフィールドワークをもとに、アプリでは鉾田市内の勉強できる飲食店の情報とマップを表示しました。

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幼馴染のためにつくったこのアプリ。鉾田市の学生はもちろん、若者のことを応援したいと思っていても、どう応援すればいいかが分からない大人たちのためにもなります。

このアプリが広がっていけば、大人にとっては地元の子どもを応援する方法となります。若者にとっても学生時代から地元とのつながりをつくることで、地元に帰ろうと思うきっかけとなることでしょう。

地域の学生を応援する大人たちの挑戦

学生たちの挑戦を支えた、自治体職員の方々からもコメントをいただきました。

  •  誰の課題を解決するのかというところを具体的にしたことで、地域のことをより深く知り、愛情のこもったアプリになったのだと感じました。ちょうど自分の子どもが当てはまるなと思いながら聞いていました。
  •  都会に出た大学生に地域に戻ってきてほしいという想いから始めた取り組みでしたが、実際に、地元を出た大学生の視点や地元に住んでいる高校生の視点から、地域の課題にアプローチしてくれたと思います。市民の皆さんにもアプリを使ってもらって、こうした挑戦をしながら地域とつながりを持てるということを広めていきたいです。

石原先生から講評をいただきました。

  •  発表は、途中で驚いたり、クスッと笑えたり、素晴らしい内容でした。どのプロジェクトも、特定の1人のワガママからスタートしていて、社会にいろいろな効果を波及できる可能性を秘めていると感じました。

そして、いよいよMVPの発表です。

MVPは、ほこたワガママLabに参加し、幼馴染のためにアプリをつくった高校2年生のNさんです。

MVPとなった1番のポイントは、たったひとりの困りごとを解決することをきっかけに地域を巻き込んだプロジェクトとなっていたことです。

地域の飲食店に伺い調査をして自身が地域との関わりをもつなかで、新たな地域の課題や可能性を見出した点が、ワガママLabとしてありたい姿を体現してくれています。

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Nさんの感想です。

  •  身近なたったひとりのためにアプリをつくる経験から、自分でもアプリをつくることで、誰かの課題を解決することができるのだと感じました。またアプリをつくって、課題を解決することができたらいいなと思います。

ワガママLabの今後の展望

最後に、株式会社IRODORI代表の谷津より今後の展望について話をしました。

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今後の活動について3つ考えています。

1つ目は、国の政策と連携していくことです。

まず、子ども家庭庁が推進する子どもの居場所づくりです。様々な課題を抱える子どもたちが、課題を解決されるのを待つのではなく、課題の解決者になれるような仕組みをつくりたいと思っています。

次に、文部科学省が推進するDXハイスクールの取り組みです。デジタルを活用した探究的な学び、デジタル課外活動の促進につなげるプログラムを用意しています。

さらに、経済産業省が推進するデジタル人材育成の分野です。自分にはデジタルは関係ないと思っている若者や女性が挑戦の一歩目を踏み出せるようなプログラムをつくっていきます。

2つ目は、地域の出身者を気持ちよく応援できる仕組みづくりです。

ワガママコーヒーというコーヒーの売り上げの一部が、ワガママLabプログラムの受講費用になる仕組みづくりを検討しています。地域での雇用を生み出していきたいと思っています。

3つ目は、ワガママの概念を世界に輸出することです。

たったひとりのワガママを叶えることが社会を動かすことを体感する学生が増えることで、日本の活動が世界から注目され、ワガママの概念を世界に輸出し、世界のみなさんとともに活動していきたいです。

これにて、Japan Wagamama Awards 2023は終了です。

2024年も地域のみなさんとともに、ワガママLabを推進していきたいと思います。

今後のワガママLabの取り組みにもご注目ください。

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